Procedure for RBMK-1000

RBMK-1000シミュレータ起動手順

About

プラントのシミュレータ開発などをしているsimgenics社という会社が RBMK-1000という原子力発電所のシミュレータを無料で公開しています。 起動手順を含んだ公式マニュアルも同社のWEBページに公開されていますが, 日本語でまとまった資料がなさそうだったのでここに起動手順としてまとめます。

目標としては「そこそこ効率的に電気出力900MW代で稼働させる」です。 なので英語のマニュアルや実際の原子力発電所とは異なる(危険な?)やり方をしている部分もあります。 実プラントでは真似しないでください。

理論的な部分や設備的な部分で間違っていることもあるかもしれません。 その際はツイッターなどでご指摘ください。あと,メルトダウンしても怒らないでください。

シミュレータの準備

とりあえずまずはシミュレータを準備する必要があります。下記公式webサイトから,シミュレータ本体,修正パッチ,公式マニュアル(英語)をダウンロードしましょう。

修正パッチはこのシミュレータを構成するファイルの一つである「Chernobyl04.ICD」というファイルです。 インストールされたシミュレータのファイルからこいつを探し当てて置換する必要があります。 この修正パッチがないと復水器の真空引きがうまく行かずタービンを起動できません。 (私はろくに調べずにスタートしたので,このバグで3回ぐらい積みました。)

また,もう一つ重要な点は公式マニュアルの単位系が「ポンド・インチ」ということです。 シミュレータ自体はオプションで単位系を変更できますが,起動時は「キログラム・メートル」になっています。 特に圧力の記載が「PSI:ポンド平方インチ」という点にご注意ください。シミュレータ上の表示は「キロパスカル」です。 (私はろくに考えずにスタートしたので,このミスで3回ぐらい積みました。)

RBMK-1000について

熱出力 3200 MW
電気出力 1000 MW
炉心入口温度 270 ℃
炉心流量 37500 t/h
ドラム内圧力 6.8 MPa

RBMK-1000(Реактор Большой Мощности Канальныйのアルファベット頭文字の略)はソ連製の原子炉です。 後ろの数字は電気出力が1000MWあることからでしょう。 有名なところでは大事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所もこのタイプです。 冷却材と減速材の特徴から「黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉」とも呼ばれ……

やめましょう

今回はあくまでRBMK-1000の起動させることが目的です。 歴史的な話とか安全性がどうとか事故が発生した原因とかそんな話はおいておきましょう。 今大事な情報は表に示した定格運転時の各パラメータです。 値はネットで調べてきたのなので信憑性は怪しいですが,大体のオーダーがつかめればOKです。 (実際,公式のマニュアルだとこの表とは全く違う値を設定する場面もあります。)

起動手順概要

各手順の詳細に入る前に全体の起動手順を確認しておきましょう。大まかに次の5つのステップに分かれています。

  • 起動前準備
  • 原子炉臨界
  • タービン起動
  • 発電機並列
  • 出力増加

一般的に原子力発電所の起動には数日単位の時間がかかります。 起動操作に伴うパラメータの時間変化をまとめた「起動曲線」というものがあるので一度確認しておくと全体のイメージしやすいかもしれません。 ( BWR原子力発電所の起動曲線:残念ながらRBMK-1000の起動曲線は見つからなかったためBWR(沸騰水型原子炉)のものです。)

なお,操作中の画像はほとんど用意していないのでイメージつきにくいかもしれませんがご容赦ください。

起動前準備

※写真は六ケ所原燃PRセンターにあった放射性廃棄物を詰めたドラム缶の模型であり,起動手順には無関係です

必要な画面を揃える

操作内容

  • 「Alarm CRT」「Schematic CRT」「TREND CHART」を開く

解説

個人的にこれらが3種の神器だと思います。常に表示しておきましょう。 何が表示されているかをなんとなく把握しておくととっさの状況把握に役立つかもしれません。 他の Turbine Status などの表示はご自由にどうぞ。

Alarm CRT は警報を表示してくれる窓です。新規に発報した警報は点滅しています。 右下の ACT というボタンを押すと点滅から点灯に変わります。 なにか異常が発生したときに新たに発報した警報が何なのか把握できるよう,警報はこまめに ACT しましょう。 シミュレータ起動直後に開くと大量の警報が出ていると思います。 この警報が全部消えれば「原子炉が正常な状態」≒「定格運転状態」になっていると言えます。 ある意味,ここに表示されているものは「やることリスト」です。

Schematic CRT はプラントの全体概要を表示してくれる窓です。 ポンプの起動・停止状態,主要パラメータなどわかりやすく表示されているので,どこになにがあるのかイメージしながら操作していきましょう。

TREND CHART は重要パラメータの時間変化を示してくれる窓です。 一瞬一瞬の値だけを見てもプラントに何が起きているのか分からない場合が多いため, 「どういう傾向で変化しているのか」を把握することが重要です。

MAKEUP SYSTEMを起動する

操作内容

  • 「Water Treatment Pumps and Condensate Storage」を開く
  • Pump-1,2両方の「START」ボタンを押してポンプを2台起動する
  • Pump-1,2両方の「OPEN」ボタンを押して2系統の吐出弁を開ける
  • 「TANK LEVEL」が増加しているのを確認する

解説

実際にパネルを開くと MAKEUP SYSTEM と表示されます。 水は通常運転中でも緊急事態でも必要なものです。原子炉を起動する前に,すぐに使える場所に一定量確保しておきましょう。 公式マニュアルだとタンクレベルが50%になるまで待ちましょうといった感じですが,ただ待っているのも暇なのですぐ次の操作に移ります。

またこのポンプが起動していて,かつ HOTWELL LEVEL CONTROL が自動になっている場合,HOTWELLの水位が減少したときに補給してくれます。(HOTWELL:復水器で凝縮した水が溜まっている部分) HOTWELL の水位が減少しすぎると,ポンプが次々に停止していき,原子炉もスクラムしてしまうので,起動している状態のほうが何かと安心です。

Condensate Systemを起動する

操作内容

  • 「Condensate System」を開く
  • 「CONDENSATE PUMPS」の「ON」ボタンを押してポンプを1台起動する
  • 「DA Level Control」の「A」ボタンを押して自動にする
  • 「POLISHER-1」の「IN」ボタンを押して通水する

解説

原子力発電所では水を温めたり冷やしたりしながら循環させます。 水の中に不純物がふくまれると作業者の放射線被ばく量が増えたり原子力発電所を構成する材料が劣化したりと良いことがありません。 そんな不純物を取り除くため原子炉を循環させる水は POLISHER で浄化しています。

公式マニュアルだと「まずは POLISHER を再生(REGENERATE)しよう」となっていますが,そのまま使い始めても問題ないです。 再生は POLISHER のフィルターが詰まったとき等にやる操作で,水を逆流させることでフィルターのつまりを解消します。 POLISHER の窓にあるパーセント表示が100%に近くなったら使っていたほうを再生し,待機させていたほうを使用してください。

Condensor Circulating Water Pumpを起動する

操作内容

  • 「Condensor Circulating Water Pumps」を開く
  • 「PUMP-1」の「ON」ボタンを押してポンプを1台起動する

解説

原子力発電所においても熱力学第二法則に則り排熱が必要になります。 排熱先(最終ヒートシンク)は日本だと海ですが,海外だと川や池の水を使う場合もあります。 このポンプは最終ヒートシンクの水を汲み上げて復水器内に通水し, 熱交換により少し暖かくなったものをまた捨てる,という循環の駆動源になっています。

「ポンプを1台起動する」としていますが,実は2台起動しても問題ないです。 起動時の低出力状態では1台の Condensor Circulating Water Pump で十分で, 電気出力が500MWになったあたりで2台目の Condensor Circulating Water Pump を起動する手順になっています。

なお,RBMK-1000のスペックを示したときに「熱出力」と「電気出力」という言葉が出てきました。 2つの値を比較してみると電気出力は熱出力の1/3程度です。 これは原子炉で発生したエネルギーの1/3のみが発電に使われているという意味です。 残りの2/3(約2000MW)はこの Condensor Circulating Water Pumps によって最終ヒートシンクに捨てられます。 もったいない感じもしますね。

蒸気の温度を上げて最終ヒートシンクとの温度差を大きくすると発電効率は上がるのですが,原子力発電所はウラン燃料を溶融させないために蒸気の最高温度に制限があります。 そのためより高温の蒸気を使用しているボイラー方式の火力発電所(発電効率4〜5割)等と比べると原子力発電所の排熱の割合は大きいです。 当然,電気出力が同じぐらいの原子力発電所と火力発電所の Condensor Circulating Water Pumpsを比較すると,原子力発電所のもののほうが圧倒的にデカいです。

Feedwater Systemを起動する

操作内容

  • 「Feedwater Pumps and System」を開く
  • 3系統すべての「INLET VALVES」の「OPEN」ボタンを押して吸込弁を開く
  • 「INLET VALVES」の開度が100%になったらの「Pump #1」の「ON」ボタンを押してポンプを1台起動する
  • 「Pump #1」が起動したら同じ列の「DISCHARGE VALVES」の「OPEN」ボタンを押して吐出弁を開く

解説

原子炉に水を送るためのポンプです。 この段階だと原子炉で蒸気が発生しておらず給水の必要がないため,このポンプはろくに仕事をしていないと思います。 TREND CHART の REACTOR FEED FLOW (青色)も上がらず「給水流量5%以下」の警報も出るかもしれませんが気にしないでいいです。 またそのうち2台目のポンプも起動することになるので予め INLET VALVES だけ全て開けておきます。

今回のポンプ起動では「吸込弁を開く」「ポンプを起動する」「吐出弁を開く」という順番で行いました。 これはどのポンプの起動操作にも当てはまる順番です。 吸込弁が開いていない状態でポンプを起動するとキャビテーションなどが発生し壊れるのでとても危険です。 同様の理由でポンプの水源となるタンクの水位が下がったときなどはポンプが自動停止します。 ポンプを起動してから吐出弁を開く理由はポンプにいきなり負荷をかけないためです。 ポンプの流量が大きくなるとその分ポンプに負荷がかかります。 特にポンプの起動時は大電流が流れますので,優しく起動してやる必要があります。

初期設定状態から変える必要がないため操作には含まれませんが Feedwater System の中の DRUM LEVEL CONNTROL には重要な要素が2つあります。 1つめは STARTUP VALVE と MAIN VALVE です。今は STARTUP VALVE が選択されていると思います。 これは流量の制御範囲の異なる2つのバルブで,起動時など出力が小さく給水流量も少ないときは STARTUP VALVE で細やかな調整をします。 そのうち出力が上がってくると STARTUP VALVE の開度が100%になっても原子炉の水位(正確にはドラムの水位)が低下するようになってしまうので,そうなる前に MAIN VALVE に制御を切り替える必要があります。 2つめは 3ELEMENT CONTROL です。今は選択されていないと思います。 この 3ELEMENT CONTROL は原子炉の水位を一定に保つ制御をするときに「原子炉水位(今の水の量)」「蒸気流量(出ていく水の量)」「給水流量(入ってくる水の量)」の3要素を考慮することで,外乱発生時に素早く対応できるようにしたものです。 ただし蒸気流量や給水流量が少ない起動時の低出力状態で 3ELEMENT CONTROL を使うと過敏な反応になってしまうので今は「原子炉の水位」だけを見て制御するモードになっています。

Emergency Core Cooling Systemを待機状態にする

操作内容

  • 「Emergency Core Cooling System」を開く
  • 「ECC COOLING VALVE」の「AUTO」ボタンを押して待機状態にする

解説

Emergency Core Cooling System は原子炉の水位が異常に低下した際などに起動し,原子炉を守るシステムです。 したがって通常状態であれば AUTO にしても何も発生しません。 恐らく普通に起動操作をやっている分にはこのシステムが起動するところを見ることはないと思います(私も見たことないです。)。 電動駆動のポンプが2つとディーゼル駆動のポンプが1つあり「原子炉の水を絶やさないぞ」という強い意志を感じます。 ここでいう「ディーゼル駆動のポンプ」というのは「ディーゼル発電機作った電気で動くポンプ」ではなく,ディーゼル機関とポンプを直接接続しディーゼル機関の回転力でポンプを動かす仕組みのものです。 しかし当然ですが「そもそもシステムを解除していた」「原子炉が突然爆発炎上した」という場合にはあまり役に立たないかもしれません。

原子力発電所の一般的な解説であれば Emergency Core Cooling System の分量は多くなると思います。 起動条件だったりポンプ性能だったり多様性がどうとか色々ありますが,今回はあくまで通常の起動操作であり,そもそもお世話にならないため割愛します。

AUTO SCRAM CONTROLを有効にする

操作内容

  • 「Reactor Power Regulation」を開く
  • 「AUTO SCRAM CONTROL」の「ON」ボタンを押して有効にする。

解説

スクラムとは原子炉を緊急停止させることで,制御棒が自動挿入されるなどといった事が発生します。 原子力におけるスクラムは「Safety Cut Rope Axe Man」の頭文字から来ている(と言われています)。 これは「初期の原子炉では制御棒がロープによってぶら下げられており,緊急時にはそれを斧で切り落とすことで挿入していたから」だそうです。

Emergency Core Cooling System と同じく通常起動をしている分にはお世話になりたくない機能ですが, Emergency Core Cooling System よりは発動しやすいため見ることもあるかもしれません。 スクラムする原因を取り除いたあとに「RESET」ボタンを押すことでスクラム信号を止めることができます(スクラムする原因を取り除かないとリセットしてもすぐまたスクラムします)。 チェルノブイリ原子力発電所の事故の解説で「ポジティブスクラムが〜」といったものを目にしますが,通常起動時には影響無い範囲ですのでこちらも割愛します。

Recirculation Pumpsを起動する

操作内容

  • 「Loop-1 Recirculation Pumps」を開く
  • 3系統全ての「Inlet Valves」をの「OPEN」ボタンを押して吸込弁を開く
  • 「INLET VALVS」の開度が100%になったらの「Pump-1」の「ON」ボタンを押してポンプを1台起動する
  • 「Pump-1」が起動したら同じ列の「Outlet Valves」の「OPEN」ボタンを押して吐出弁を開く
  • 「Loop-2 Recirculation Pumps」を開き,Loop-1と同様の操作をする

解説

Feedwater System の起動時と同様のやり方でRecirculation Pumpsを起動します。 通常運転時は2~3台ずつ起動しますが,起動時の今は1台ずつで十分です。

この Recirculation Pumps は炉内に強制的に大量の水を流し込むことでより多くの蒸気を発生させるためのものです。 また原子炉内を流れる水は炉心を通過すると全て蒸気になる訳ではありませんので,蒸気にならなかった水を回収して再び炉心に流す目的もあります。 Recirculation Pumps の流量調整は原子炉の出力調整において重要な役割があります。

原子炉内において水には中性子を吸収する効果と中性子を減速させる効果があります。 このあたりは説明し始めるととても面倒なので,原子力発電所の原子炉内では「中性子が吸収されると核分裂は発生しにくくなる」「中性子が減速されると核分裂が発生しやすくなる」という点だけ覚えておきましょう。 また液体の水と気体の水(蒸気)では液体の水のほうが密度が大きいので2つの効果が高いです。 よって原子炉内部で沸騰が発生すると同時に2つの効果が下がります。 この2つの効果は相反する影響を及ぼしますが,RBMK-1000においては中性子を吸収する効果の影響が大きいので「中性子の吸収が減る→多くの中性子が残る→核分裂が多く発生する→原子炉の出力が上がる」という現象が発生します(その後,燃料の温度が上がるとドップラー効果で中性子吸収が増えるので原子炉出力の増加は抑えられます。)。 通常の起動操作時では問題になることは少ないですが原子炉内の沸騰状態の変化には気をつけましょう。

Off-line Core Cooling System を停止する

操作内容

  • 「Off-line Core Cooling System」を開く
  • 「LOOP-1」の「OUTLET VALVE」の左側のボタンを押して吐出弁を閉める
  • 「LOOP-1」の「PUMP」の左側のボタンを押してポンプを停止する
  • 「LOOP-2」についても「LOOP-1と同様の操作をする

解説

原子炉は制御棒が全て挿入されている状態でも崩壊熱によって温度が上昇します。 その熱を除去していたのが Off-line Core Cooling System です。 今から原子炉を臨界にして温度を上げて蒸気を作っていく必要があるためこのシステムを止めます。 このシステムを止めると炉水温度が徐々に上昇してくことが確認できます。 なお,この系統に関しては吸込弁を開けたままにしています。 これは恐らく緊急時など必要なときに短時間で再起動できるように,という目的のためだと思われます。

このあと公式マニュアルでは崩壊熱で蒸気が発生するまで待ちます。 しかし,ただ待っていると時間がかかるので蒸気が発生する前から次の手順を進めていきます。

原子炉臨界

※写真は遠巻きに撮影した美浜発電所であり,起動手順には無関係です

Deaerator Steam Supply の制御を自動に変更する

操作内容

  • 「Deaerator Steam Suplly」を開く
  • 「PRS SET POINT」を148.7KPaに変更する
  • 「AUTO」ボタンを押して自動にする
  • 「DA VENT VLV」の上ボタンを押して開度50%にする

解説

Condensate System を起動したときにも DA Level Control というものが出てきました。 Deaerator = DA です。 Deaeratorにはいくつかの役割がありますが,代表的なものは原子炉に入れる水から酸素などの非凝縮性気体を取り除くことです。 そのために原子炉の蒸気を一部抽気し,Deaeratorに流しています。 DA VENT VLV を開ける(かなり連打が必要なので面倒くさい操作)ことで気体が排気筒へ排出される仕組みになっています。

またFeedwater Pump の水源もこのDeaeratorが担っていますので水位が低下したときは注意が必要です。 とはいうものの,私が通常起動操作をしている分にはあまり気にかけることはありませんでした。

Main Steam Dump controlの設定を変更する

操作内容

  • 「Main Steam Dump Control」を開く
  • 「SET POINT」を4500kPaに変更する

解説

Main Steam Dump control はタービンを通らずに復水器に繋がるラインの弁をコントロールすることで原子炉の圧力を制御するものです。 圧力によって水が蒸気になる温度が決まりますので,原子炉の圧力を制御するということは間接的に蒸気の温度を制御することに繋がります。 なお公式マニュアルだとこの時点での設定圧力は3500kPaですが4500kPaでも問題ないです。

CONDENSER VACUUM LOW という警報が消える前に Main Steam Dump control のVALVEが開くと, 蒸気が流れ込むことで復水器が正圧になってしまいます。 復水器は運転中は真空状態であるため負圧には強いですが正圧には弱いです。 復水器を正圧から守るため,復水器が壊れる前にラプチャーディスクと呼ばれるものが吹き飛び圧力を逃がします。 このシミュレータでラプチャーディスクが壊れると(シミュレータ内の通常操作では)修理する方法がありませんのでやり直しになりますのでご注意ください。

Reactor Drain Controlの設定を変更する

操作内容

  • 「Reactor Drain Control」を開く
  • 「SETPOINT」を10に設定する

解説

Reactor Drain Control は原子炉の水が多くなりすぎたときに排水する機構です。 そもそも原子炉の水が多くなりすぎるとタービンに水が混入し故障の原因になりますので,原子炉の水位を一定に保つ必要があります。 しかし Reactor Drain Control で水を排出するとその水に含まれるエネルギーは発電に利用できないため,通常運転中はあまり作動してほしくはありません。 そのため目標値を+10(恐らく単位はcm)に設定してやることで,いざというときにだけ作動するようにします。 通常運転中は蒸気として原子炉の水が常時放出されているので給水を絞れば原子炉水位は下がります。

TURNING GEAR を起動する

操作内容

  • 「Turbine Support Systems」を開く
  • 「Lube Oil」「Hydraulic Oil」「Steam Drain」の「START」「OPEN」ボタンを押して起動する
  • 「Turbine Control」を開く
  • 「TURNING GEAR」の「ON」ボタンを押して起動する

解説

Lube Oil とはタービンの潤滑油のことで,ポンプで汲み上げてタービンの軸受等に供給します。 Hydraulic Oil とはタービンの制御油のことです。タービン制御用の弁はかなり巨大であるため油圧式の弁になります。 このポンプが起動していないとタービン関係の弁を動かすことができません。 Steam Drain は仕事をした蒸気の一部が凝縮したものを回収するドレン弁のことです。 原子力発電所で利用している蒸気は飽和蒸気のため,仕事をすると液体になりやすいです。 特に熱出力が小さい状況など蒸気の温度が十分で無いときはドレンが溜まりやすくなるため Steam Drain を開けます。 一方熱出力が十分あるときに Steam Drain が空いていると,高温の蒸気も逃げてしまうため熱効率が悪くなります。 そのため,ある程度の熱出力が出た段階で Steam Drain は閉めます。

TURNING GEAR とはタービンを電動モータでゆっくり回転させる装置です。このシミュレータでは20rpmで回転します。 なお Turbine Control にある SETPOINT の数字は現在のタービン回転数を示している訳ではないのでご注意ください。 蒸気を流してタービンを回転させますが,止まった状態のタービンに蒸気を流しても回転を開始できないので,タービン起動は TURNING GEAR によって回転している状態で行います。 タービンの回転速度が上がると TURNING GEAR は自動でタービンから外れるようになっています。 またタービン本体はかなり重量があるものなので,停止したままだと自重でたわみが発生します。 これを防止するため,タービンの起動前に TURNING GEAR を使って回転させておくことで変形を緩和させる,という役割もあります。

CONDENSER AIR EJECTOR を起動する

操作内容

  • 「Turbine Support Systems」を開く
  • (主蒸気圧力が34kPaになったら)「Steam Seal」の「START」ボタンを押して起動する。
  • 「Condenser Vacuum System」を開く
  • (主蒸気圧力が1700kPaになったら)CONDENSER AIR EJECTORの「ON」ボタンを押して起動する。

解説

Steam Sealの操作内容のところに()書きで主蒸気圧力の条件を書いていますが,これは公式マニュアルの記載を踏まえたものなので無視してもいいです。 主蒸気圧力が無い状態で Steam Seal を起動してもその圧力は0kPaのままで役に立っていませんが,主蒸気圧力が大きくなればそのうち動作するようになりますので,待っているのが面倒であればとりあえずボタンだけ押して次の手順に進みましょう。

タービンには回転している部分と止まっている部分があり,その境目には当然隙間があります。 その隙間から蒸気が漏れ出すと熱効率的にも問題ですし,原子炉に通水した水を直接タービンに導くような原子力発電所の場合は,放射性物質漏洩の観点から危険です。 そのため,隙間部分は蒸気を導くための穴が空いており,その穴を負圧にすることで蒸気が外部に漏れないようになっています。 また原子炉の蒸気の熱を利用して Steam Seal という非放射性の蒸気を作り,それを隙間に流してやることで放射性の蒸気の漏洩を防止しています。

CONDENSER AIR EJECTOR の操作内容のところにも()書きで主蒸気圧力の条件を書いていますが,同様に公式マニュアルの記載を踏まえたものなので無視してもいいです。 CONDENSER AIR EJECTOR とは復水器を真空状態にするための装置で,アスピレーターのような仕組みです。 原子炉の蒸気の圧力を用いて高速流を作り,その勢いで復水器内の非凝縮性ガスを排出します。 運転状態の復水器に入り込む気体はほぼ蒸気であるため, Condensor Circulating Water Pump によって冷却してやると凝縮し体積が激減し,それだけで真空状態が保てます。 CONDENSER AIR EJECTOR はあくまで起動時に復水器内にある空気を排出したり,放射線分解などで生じる非凝縮性ガスを排出したりするためのものなので,流量は大したことないです。

火力発電所にも原子力発電所にも排気筒が存在しますが,排気元が全く違うというのが面白いですね。 火力発発電所の場合はボイラーなどの排気で主な気体は燃焼によって生じた二酸化炭素です。 原子力発電所の場合は復水器からの排気で主な気体は放射線分解などで生じた非凝縮性ガスです。 なお,海外の原子力発電所の写真に見られる直径の大きな塔は Condensor Circulating Water Pump の先にある冷却塔ですので排気筒とは関係ありません。

TURBINE TRIP をリセットする

操作内容

  • 「Turbine Control」を開く
  • 「TURBINE TRIP」の「RESET」ボタンを押してタービントリップをリセットする。

解説

タービントリップをリセットするためには Steam Seal が起動しているなどいくつかの条件が必要だったためここまでの操作をしてきました。 といってもまだ原子炉が臨界にもなっていないのでタービン起動は先の話です。 タービンが何かしらの理由でトリップした際にはこのリセットボタンを押してください。 タービンがトリップすると蒸気が遮断され回転数が徐々に低下していきますが,早めにリセットして再び蒸気を流すことができればその分復旧も楽になります。

AUTOMATIC Reactor Control を有効にする

操作内容

  • 「Reactor Power Regulation」を開く
  • 「AUTOMATIC Reactor Control」の「ON」ボタンを押して有効にする
  • 「AUTOMATIC Reactor Control」の「POWER SETPOINT」を5%に変更する

解説

AUTOMATIC Reactor Control とは Absorber Rod の位置を自動的に制御することで熱出力を指定の値にコントロールしてくれる装置です。 ただし実際の熱出力が目標値にある程度近づかないとコントロール開始しませんので現状では何も動いていません。 原子炉が臨界になったあとの熱出力の変更は全て AUTOMATIC Reactor Control の POWER SETPOINT を変更することで行います。

そもそも原子炉臨界操作のセクションなのにタービン関連の操作ばかりだったのは,この AUTOMATIC Reactor Control を有効にするためです。 タービントリップが解除されていないと目標値に2%より大きい数字を設定できません。

なお,炉内のパラメータ(圧力,温度,沸騰量)や燃料の燃焼度により,臨界に必要な Absorber Rod の引き抜き具合は変化します。 色々なパラメータをいじったときに AUTOMATIC Reactor Control がどのように Absorber Rod を動かすかを観察すると勉強になると思います。

Absorber Rod を引き抜いて臨界にする

操作内容

  • 「Absorber Rod Control」を開く
  • 右上にある「f」を選択する
  • 「PULL RODS」ボタンを押してAbsorber Rodを引き抜く
  • 「PULL RODS」ボタンの下にある数字が約-4になったら右上にある「s」を選択する
  • 「Thermal Power」が約5%になるまで「PULL RODS」「HOLD」ボタンを適宜操作する

解説

いよいよ Absorber Rod を引き抜いて原子炉を臨界にしていきます。 そもそも臨界とは「消滅する中性子数と生成する中性子数が釣り合っている状態」のことです。 そのため熱出力(中性子数に比例)の大きさに関係なく臨界状態は成立します。

臨界操作をするときは「PULL RODS ボタンの下にある数字」と TREND CHART のNEUTRON RATEに着目しましょう。 「PULL RODS ボタンの下にある数字」は Negative Log Flux Indicator という値で正直なんなのかよくわかりませんが,反応度(臨界状態からどれだけ離れているかという指標,ゼロのとき臨界状態)のように考えておけばなんとなく上手くいきます。

なお,公式マニュアルだと「CENTER CORE ONLY」ボタンを押して原子炉中心の Absorber Rod のみを引き抜く,となっています。 しかし中心の Absorber Rod だけだとなかなか臨界にならないので,時短のために全ての Absorber Rod を引き抜きましょう。

Negative Log Flux Indicator がわずかに正の状態になっていれば,炉内の中性子が増加している状態ですので, Thermal Power も増加しているはずです。 Negative Log Flux Indicator が +0.1 ぐらいになるように「PULL RODS」「HOLD」ボタンを適宜操作してください。 「PULL RODS」を押すとNegative Log Flux Indicator が増加します。臨界に近くなると指数関数的に増加するので注意してください。 「HOLD」を押すと未臨界状態であれば減少し,臨界状態であれば一定になります。

Thermal Power が3%ぐらいになると AUTOMATIC Reactor Control の制御範囲に入るので勝手に Absorber Rod が操作され Thermal Power 5%に制御してくれます。 ここまでくれば一安心です。

原子炉内の温度・圧力のパラメータも臨界操作に影響を与えます。詳しい情報が分からないため怪しいですが,低温のほうが臨界になりやすいと思われます。 そのためさっさと臨界までやったほうが楽になリます。

タービン起動

※写真は女川原子力発電所のPR館にあったBWR圧力容器の模型であり,起動手順には無関係です

熱出力10%まで出力を上げる

操作内容

  • 「Reactor Power Regulation」を開く
  • 「AUTOMATIC Reactor Control」の「POWER SETPOINT」を10%に変更する

解説

一度 AUTOMATIC Reactor Control の制御範囲になればその後の出力変動は簡単です。 AUTOMATIC Reactor Control の POWER SETPOINT を変える上下の矢印は2つずつありますが,左は5%刻み,右は0.5%刻みで変化します。 ゆっくり刻んだほうが安全で優しいですが,熱出力5%→10%の変更であれば一気に5%変えても恐らく平気です(先の話になりますが熱出力90%ぐらいでは慎重に操作しないといきなりメルトダウンします。)。

POWER SETPOINT を上げたときには,TREND CHART の各値がどのように動くかを観察してみましょう。 既に蒸気が発生している場合,熱出力が上昇すると DRUM STEAM FLOW が増えるかもしれません。 興味深いのは DRUM STEAM FLOW が上昇すると REACTOR LEVEL も一瞬だけ上昇することです。

恐らくですが,これは沸騰によって発生した蒸気によって Steam Drum 内の液体が持ち上げられたため,と考えられます(RBMK-1000 の水位計の仕組み等がよくわからないので,違ったらすいません。)。 一旦水位が上昇しますが,すぐにFeedWater System が反応して水位を下げる方向に制御が効きますので,水位はもとの値に戻ります。 蒸気発生によって水位が上昇するイメージは次の写真を参考にしてください。

加熱中

停止中

STEAM TURBINE を起動する

操作内容

  • 「Turbine Control」を開く
  • 右側にある「AUTO」ボタンを押して自動にする
  • 左側にある「FAST」ボタンを押す
  • 左側にある「3600」ボタンを押す

解説

いよいよタービン起動です。 この操作は熱出力,主蒸気圧力が安定してから行いましょう。 主蒸気圧力が安定している場合, Main Steam Dump control の VALVE が何割か開いていると思います。 繰り返しになりますが,この弁はタービンを通らずに復水器に繋がるラインに設置されています。 したがってタービン起動前は原子炉でせっかく作った蒸気を無駄に捨てている状態という訳です。 逆を言うと,この無駄に捨てている蒸気の持つエネルギーが,これからタービンを起動するときに利用できる余力ということになります。 そのため,余力のない状態でタービンを起動しようとしても上手くいきません。 この RBMK-1000 は熱出力100%で電気出力1000MWの発電所ですので,熱出力が10%もあればタービン起動や発電機並列には問題ありません。

公式マニュアルでは SLOW で900rpmまで一旦増速する手順になっています( SLOW とか FAST というのは増速する速度のことです。)。 原子力発電所のタービンは全長数メートルの翼を回転させる超巨大機器でありながら回転翼と固定翼の間は数ミリとかの世界で,しかも高温蒸気を使用するため材料の熱膨張などの考慮も必要というかなり繊細な設備です。 そのため本来であれば起動時も慎重な操作が必要ですが,このシミュレータではFASTでいきなり3600rpmまで上げてもちゃんと動きますので,時短のためにさっさと上げてしまいましょう。 なお,Turbine Control の制御弁にも STARTUP と MAIN の2種類がありますが,Feedwater System のときと同様に低出力時は STARTUP を使用します。

タービンにも固有振動数というものがあり,回転数が固有振動数に近いと共振を起こして振動が増加します。 Turbine Control の画面の中には VIBRATION METER があるので,どのタイミングで増加するか確認してみてください。 恐らく100〜200rpmあたりで振動が一瞬大きくなると思います。 試しにタービンの制御を Manual にし,固有振動数付近で放置してみると面白い(?)ことになるかもしれません。

操作の中で,AUTO ボタンを押した段階ではタービンは動き始めません。これは SPEED SETPOINT に20という値が入っているからです。 この値がどこから出てきたかというと TURNING GEAR による現在の回転速度です(つまり20rpm)。 この SPEED SETPOINT の値ですが,タービンがトリップしていると強制的に0rpmになります。 またタービンがリセットされており,かつ目標値が設定されていない状態だと,現在の回転速度が自動的に SPEED SETPOINT に入力されます。 なのでタービントリップ後の復旧操作で急いでタービンをリセットしただけだと,その時のタービンの速度で一定になったままです。 3600rpmの目標値を改めて設定してやる必要がありますのでご注意ください。

ちなみに,原子力発電所のタービンは火力発電所のタービンに比べてかなり大型です。 原子力発電所の蒸気は飽和蒸気であり火力発電所の蒸気に比べると圧力・温度が低いため,蒸気の量でパワーを得る設計方針になっているためです。 またこのシミュレータの Schematic CRT のタービンを見るとと,3つの「><(これで1つのタービンを示しています)」が1つの軸に刺さっているような形状になっています。 このように複数のタービンで1つの軸を回す仕組みをタンデム・コンパウンドといいます。 一方大型の火力発電所などではクロス・コンパウンドといい,最初のタービンとその後のタービンが別の軸を回転させることで高出力が得られるようになっている仕組みのものもあります。

ところでタービンの最終目標回転速度はその国の電気の周波数と密接な関係があります。 このシミュレータでは3600rpm,つまり1秒間に60回転しているので,発電機の極数(1回転する間にN極とS極が入れ替わる回数に関係)は2で,60Hzの電気を生み出していると考えられます。 日本で60Hzの地域にある火力発電所も同様に2極で3600rpmですが,原子力発電所だと4極で1800rpmになっています。 この理由も原子力発電所のタービンが大型であるためです。

なお詳細不明ですが,ネットで調べる限りだとロシアやウクライナはじめ周辺諸国はだいたい50Hzなのでなぜ3600rpm?と思っています。 60Hzの国といえばアメリカで,このシミュレータを作っているsimgenics社さんはアメリカの会社なので,もしかして???simgenics社さん???

発電機並列

※写真は志賀原子力発電所のPR館にあったBWR制御盤の模型であり,起動手順には無関係です

Main Steam Dump controlの設定を変更する

操作内容

  • 「Main Steam Dump Control」を開く
  • 「SET POINT」を80000kPaに変更する

解説

スペックのところにドラム内圧力6.8Mpaと書きましたがここでは8MPaに設定しています。 設定を変更すると徐々に主蒸気圧力が上昇し始めると思いますが,実際に8MPaになるまで放置する訳ではありません。 6.8MPa程度になったら発電機を並列しましょう。

ではなぜ8MPaを設定するの?という疑問を感じますね(感じてください)。 実は圧力制御の目標値を入力する場所は2箇所あります。 今までの状態では Main Steam Dump Control の値を変えるともう一つの設定値も追従して変更されていたため,圧力制御といえば Main Steam Dump Control をの値を変更していました。 しかし発電機を並列するともう一つの設定値が独立して動くようになります。

Main Steam Dump control では圧力が設定値以上になるとタービンを介さずに復水器に直接繋がる弁を制御します。 そのため, Main Steam Dump control で圧力制御すると蒸気が無駄になります。 一方もう1つの設定値の方は圧力を調整するためにタービンに繋がる弁を制御します。 その結果,熱出力を上げる→蒸気の量が増える→主蒸気圧力が増えそうになる→タービンに流れる蒸気の量が増える→発電量が増える,という結果になります。 以上のような理由から Main Steam Dump control はもう1つの圧力設定値よりも高め(11MPa)に設定し,異常事態で圧力が過大になったときにバックアップ的に開くようにします。

ちなみに手順書作成にあたり,ここの値をどうするかとても迷いました。 公式マニュアルだと Main Steam Dump Control を約11MPaに設定しましょうとなっています。 また最終的に10MPaにまで主蒸気圧力を上げる操作があったり,シミュレータでは主蒸気圧力が7.5MPa以上にならないと LOW MAIN STEAM TEMPERATURE が消えなかったりします。 しかしながら軽水炉等と比較すると原子力発電所として11MPaの蒸気は高すぎるように感じてなりません。 シミュレータのパラメータ設定が間違っているのか参考にしている実機のスペックが間違っているのかよくわかりませんが,7MPaぐらいのほうが待ち時間も短く電気出力も高出力になりやすいので,この手順書では6.8MPa付近で運転させます。 それにしても本当にどういうことですか???simgenics社さん???

GENERATOR BREAKER を投入する

操作タイミング

主蒸気圧力が6.8MPa付近になったら

操作内容

  • 「Turbine Control」を開く
  • 右下にある「GENERATOR BREAKER」の「SCOPE ON/OFF」ボタンを押して SCOPE を起動する
  • 右下にあるメータの針が12時の方向を指したタイミングで「GENERATOR BREAKER」の「CLOSE」ボタンを押して発電機を並列する

解説

先程述べた「もう1つの圧力制御設定値」というのが Turbine Control の左側にある PRESSURE SETPOINT です。 発電機並列前で主蒸気圧力が上昇している状態だと,この PRESSURE SETPOINT は現在の主蒸気圧力に合わせて増加していると思います。 GENERATOR BREAKER を CLOSE するとその瞬間の主蒸気圧力で固定されます。 そして固定された PRESSURE SETPOINT になるようにタービンに繋がる弁を開閉するようになります。 発電機に並列する前の状態でタービンに繋がる弁の開度を大きくするとタービンの回転速度が大きくなりました。 しかし発電機に並列した後の状態ではタービンの回転数が系統の周波数(60Hz)に合わせた回転数(3600rpm)で固定されますので,代わりに電気出力が上がることになります。 熱出力10%で発電機並列をした場合でも数十MW程度にはなると思います。

実は発電機を並列する前の状態だと,タービンの回転数が約3606rpmになっています。 これはタービンの速度制御系がヘボな訳ではなくわざと大きめの回転数に設定されています。 発電機を並列する前のタービンは空転している状態ですが,発電機を並列した瞬間にタービンに負荷が加わります。 負荷がかかったときのショックでタービンの回転速度が遅くなることを見込んで予め3606rpmにしているという訳です。 自転車でペダルを漕いでいるときに急に負荷がかかった感じや,MT車でクラッチをいきなり繋いだときの感じがイメージしやすいかもしれません。

電力系統は3相交流になっているため,発電機を並列するときはタイミングを合わせる必要があります。 そのためにあるのが,SCOPE で,電力系統と発電機の位相差を表示しています。 この針がズレた状態で発電機を並列させると電磁力で発電機が壊れる可能性があるため,11時から13時ぐらいの位置以外だと並列できない仕組みになっています。 なお中央制御室にあるスイッチを押してから発電機並列のための遮断器が実際に動作するまでにはわずかながら時間がかかると思いますので,12時の位置より気持ち早めで発電機並列を行いましょう。

熱出力を徐々に上げていく

操作内容

  • 「Reactor Power Regulation」を開く
  • 「AUTOMATIC Reactor Control」の「POWER SETPOINT」を徐々に上げていく

解説

おめでとうございます

無事に原子の火が灯りましたね。ここまできてしまえば後は Reactor Power Regulation の制御に任せて熱出力を上げていくだけです。 とりあえず万歳三唱とかやっておきましょう。 ただし出力が一定値以上になったタイミングでやるべき事がありますので,次の「出力増加」のセクションも見ながら操作してください。 POWER SETPOINT の数字を上げるときは5%ずつ一気に上げてもいいですが熱出力80%ぐらいからは慎重にやらないと突然メルトダウンします。 正確なことはわかりませんが Neutron Flux が100+x%とかになると多分ダメそうです。

なんとなくイメージがついたかもしれませんが,RBMK-1000 は原子炉の出力制御に合わせてタービンの出力が決まるタイプ(原子炉主・タービン従制御)の発電所です。 同じ原子力発電所でもBWR(沸騰水型原子炉)は原子炉主・タービン従制御,PWR(加圧水型軽水炉)はタービン主・原子炉従制御となっており,火力発電所はタービン主・ボイラー従制御です。 設計思想の違いが感じられて面白いですね。

公式マニュアルだと熱出力を100%まで上げた後,Turbine Control の PRESSURE SETPOINT を上げていく操作が記載されていますが,正直意味があるのかよくわかりませんので割愛します。 このページの一連の操作で900MWぐらいは到達できると思いますので,そこから1000MWへの飽くなき挑戦はご自身の手で模索してみてください。 とにかく大量の蒸気を作ってタービンに無理やりでも送り込んでやれば達成できるはずです。

出力増加

※写真は遠巻きに撮影した東通原子力発電所であり,起動手順には無関係です。

Feedwater Systemの設定を変更する

操作タイミング

電気出力が80MWになったら

操作内容

  • 「Feedwater Pumps and System」を開く
  • 「DRUM LEVEL CONTROL」の「CONTROL VALVE SELECT」の「MAIN VALVE」ボタンを押して制御弁を切り替える
  • 「DRUM LEVEL CONTROL」の「3 ELEMENT CONTROL」ボタンを押して3要素制御に切り替える

解説

「電気出力80MWになったら」という操作タイミングにしていますが,STARTUP VALVEの開度が100%になっているにも関わらず DRUM LEVEL が低下しているときは既に給水が追いついていない状況ですので急いで切り替えてください。 MAIN VALVE は STARTUP VALVE よりも大量の水を送り込むからなのか,プラント全体の熱収支のバランスが崩れるからなのか,一時的に主蒸気の量が減少し,発電量も下がります。 元々が80MWあれば問題ないと思いますが,0MWになってしまうと発電機がモータと化してしまうため自動で発電機解列→タービントリップ→原子炉スクラムとなるのでご注意ください。 おさらいになりますが, 3ELEMENT CONTROL は原子炉の水位を一定に保つ制御をするときに「原子炉水位(今の水の量)」「蒸気流量(出ていく水の量)」「給水流量(入ってくる水の量)」の3要素を考慮するものです。 私が操作してるときの印象だと,3ELEMENT CONTROL にすると水位が目標値に対して上下振動したままになるのであまり優秀じゃないように思いました。

Turbine Controlの設定を変更する

操作タイミング

電気出力が80MWになったら

操作内容

  • 「Turbine Control」を開く
  • 「VALVE SELECT」の「MAIN」ボタンを押して制御弁を切り替える
  • 「Turbine Support Systems」を開く
  • 「Steam Drain」の「CLOSE」ボタンを押して停止する

解説

ここも Feedwater System の時と同じで,大量の蒸気を流すようになったらそれ用のバルブに切り替えましょうという操作です。 蒸気量を一定に保ちながら徐々に開度が入れ替わっていくのは見てて面白いので要注目です。 そしてSTARTUPだと何%開いていたのがMAINに切り替わると何%で十分になるのかも見ておくと操作の必要性が実感できるでしょう。

TURNING GEAR 起動時に予告していましたが,もう蒸気は十分あるので Steam Drain を閉めます。 これにより発電所全体の熱収支が改善するため発電量も数十MW増えると思います。 今回の起動手順ではあまり着目する機会がありませんでしたが,実は原子力発電所では蒸気やドレンが持っている熱を利用して原子炉に送る水を温めています。 詳細は「再生ランキンサイクル」などで検索してみてください。 このように発電所では蒸気の持つエネルギーを最大限有効活用する色々な仕組みが取り入れられています。

2台目の CONDENSATE PUMPS を起動する

操作タイミング

熱出力が20%になったら

操作内容

  • 「Condensate System」を開く
  • 「CONDENSATE PUMPS」の「ON」ボタンを押して2台目のポンプを起動する

解説

給水が足りなくなる前に追加起動しましょうシリーズその1です。 最初に1台起動したタイミングで2台3台起動していても実は平気です。 しかしながらこれは発電所のシミュレータなので,不要なポンプを起動して電気を消費しては本末転倒だろう,という信念により正しく増台する手順にしました。

2台目のFeedwater Pump を起動する

操作タイミング

熱出力が20%になったら

操作内容

  • 「Feedwater Pumps and System」を開く
  • 「Pump #2」の「ON」ボタンを押して2台目のポンプを起動する
  • 「Pump #2」が起動したら同じ列の「DISCHARGE VALVES」の「OPEN」ボタンを押して吐出弁を開く

解説

給水が足りなくなる前に追加起動しましょうシリーズその2です。 こちらも面倒であれば最初に複数台起動していてもいいです。 また,給水量が2台でも足りないと感じたら3台目も起動しましょう。

ただし,Feedwater Pump と CONDENSATE PUMP は一蓮托生ですので,運転台数のバランスには気をつけてください。 CONDENSATE PUMP は HOTWELL水位 ,Feedwater Pump は DA水位が低下すると停止してしましますが,系統の構成上,CONDENSATE PUMP が停止すると,その後しばらくして Feedwater Pump も停止する運命にあります。 熱出力が高い状態で給水が失われると原子炉水位もすぐに低下しますので,かなり危険です。

Thermal Power Correction を起動する

操作タイミング

熱出力が25%になったら

操作内容

  • 「Reactor Power Regulation」を開く
  • 「THERMAL POWER CORRECTION」の「ON」ボタンを押して有効にする

解説

詳細な構造が不明なのでよくわかりませんが Thermal Power Correction は熱出力を補正してくれる装置です。 いままで確認していた熱出力の値は中性子検出器の数値を元に算出していたのだと思います。 この Thermal Power Correction は別の中性子検出器を使って計算しているか,または炉心流量や蒸気の発生量などから熱出力を計算している,といった仕組みでしょうか。 詳細が分からないので完全に憶測ですが,原子力発電所の中性子計測はかなり広い範囲の計測が必要になるので,誤差が大きくならないように補正しているのだと思います。

2台目の Recirculation Pumps を起動する

操作タイミング

電気出力が250MWになったら

操作内容

  • 「Loop-1 Recirculation Pumps」を開く
  • 「Pump-2」の「ON」ボタンを押して2台目のポンプを起動する
  • 「Pump-2」が起動したら同じ列の「Outlet Valves」の「OPEN」ボタンを押して吐出弁を開く
  • 「Loop-2 Recirculation Pumps」を開き,Loop-1と同様の操作をする

解説

炉内の発生蒸気が増えると燃料が十分に冷却されない恐れがあるため,Core Status の MAX VOIDING が上昇してきたら早めに増台してあげましょう。 また MAX VOIDING が急増するとそれに伴い熱出力が上がる場合もあるので気をつけてください。 Recirculation Pump を増台した場合,原子炉内に送り込まれる水の量が増えますので一時的に蒸気発生量も下がるかもしれません。 ポンプの増台は慎重に行いましょう。

2台目の Condensor Circulating Water Pump を起動する

操作タイミング

電気出力が500MWになったら

操作内容

  • 「Condensor Circulating Water Pumps」を開く
  • 「PUMP-2」の「ON」ボタンを押して2台目のポンプを起動する

解説

こちらも最初の段階から起動しておいてもなんら問題のないポンプです。 復水器内に送られる蒸気の量が増えると,徐々に復水器の真空度が悪化していくと思います。 復水器の真空度が悪化すると発電量も減ってしまいますので,そうなる前に増台しましょう。

To Be Continued

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